プログラミングの妙が光る!パリ警視庁音楽隊「マスターピース Vol. 15:大魔法使いたち」CDレビュー

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HAFABRA MUSICからパリ警視庁音楽隊演奏のCD「マスターピース Vol. 15:大魔法使いたち(Les Maitres Sorciers: Masterpieces Vol. 15)」が発売になり、日本の問屋さんにも入ってきたようなので、WBP Plus!に商品登録を行いました。

商品登録にあたって先に演奏を聴いてから決めるのですが、とても素敵なCDだったのでレビューも一気に書きました。

というわけでこちらでも。


ハファブラ・ミュージックのカタログの中でも指折りの作品が収録される「マスターピース」シリーズ。

今回は同シリーズでおなじみの顔になってきたコスミツキの「大魔法使いたち」で幕を開けます。ファンタジックでゲームチックな曲調を想像しそうなタイトルですが、ファンタジックさはあるものの音楽のスタイル的にもヴァリエーションに富んでおり、安直に映画音楽的に終わらないところがコスミツキらしい骨太な作品です。12分の間に様々な音楽を楽しむことが出来ます。原題の「Les Maitres Sorciers」はフランス語で、直訳するのが難しいところなのですが、英語だと「The Masters Wizards」というような感じになります。

それと呼応するように古典の名作「魔法使いの弟子」が続くのも粋なプログラム。名手ジョセ・シンスによる編曲ですが、馴染みのあるメロディとクラシカルな響きが一旦落ち着きを与えます。

パリ生まれのオリヴィエ・カルメルによる「クトゥルフの呼び声」はラヴクラフトの小説「クトゥルフの呼び声」(The Call of Cthulhu)に着想を得たものと思われますが、約22分の壮大な作品で、ある種デメイの「指輪物語」あたりとも似たような、ストーリー性のあるファンタジックな雰囲気です。おそらくとても難しい。聴いている分には楽しい作品です。

オーリオの「アクイラ・ノン・カピト・ムスカス」はラテン語で、「鷲は蝿を捕まえない」というような意味になります。サブタイトルの「エポマンドゥオドゥルム」は帝政ローマ支配下のガリアの独自文化であるガロ・ローマ文化が集まった都市のことのようです。ピアノが緊張感を生み出すために効果的に使われています。「いかにもローマ」という感じではなく少し現代的な要素もある作品で、ここまでファンタジックな作品が続いたので強烈な印象を残します。CDで聴く楽しみがあって良いですね。素敵なプログラミングです。

続くカロル・ベファもパリ生まれの作曲家。「メモリアル」は第一次世界大戦集結の記念という文脈の中で委嘱された作品で、同じくフランスのベルリオーズの「葬送と勝利の大交響曲」が戦争と結びついていたように、この作品では第一次世界大戦の太平洋側を描いているとのこと。戦争そのものを描いた作品ではなく、戦争の後も人生は続く、というメッセージが込められた美しい作品です。

最後のローラン・ボモン「踊りに行きたかったカボチャ」はアルバムの最後をショーの終わりのように飾る楽しくも切ない、やや感傷的なワルツ。魔法や神話といったファンタジックな要素のある作品から始まり、帝政ローマ、かなり飛んで第一次世界大戦、と来たプログラムを最後にもう一度ファンタジックに締めます。

さすがハファブラのマスターピースシリーズ、どれもクオリティの高い作品と演奏で、吹奏楽を好きで良かった!と思わせてくれるアルバムに仕上がっていますが、今回は特にプログラミングの妙も光ります。素敵なアルバムに出会えました!

レビュー:梅本周平(Wind Band Press)

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商品詳細は以下の通り。

■原題:Les Maitres Sorciers: Masterpieces Vol. 15

■指揮者:ジルダス・アルノワ(Gildas Harnois)

■演奏団体/演奏者:パリ警視庁音楽隊(Orchestre d’harmonie des Gardiens de la Paix)

■レーベル:ハファブラ・ミュージック(Hafabra Music)

■発売年:2019

■収録曲:

1. 大魔法使いたち:アレクサンドル・コスミツキ [12:51]
Les Maitres Sorciers:Alexandre Kosmicki

2. 魔法使いの弟子:ポール・デュカス(編曲:ジョセ・シンス) [12:23]
L’apprenti Sorcier:Paul Dukas(arr. Jose Schyns)

クトゥルフの呼び声?4本のホルンと吹奏楽のための幻想協奏曲:オリヴィエ・カルメル
Call of Cthulhu – Concerto Fantastique pour quatuor de cors et orchestre:Olivier Calmel
3. パート1. プレゼンス:1. ダニッチ  Part 1 Presence 1 Dunwich  [5:29]
4. パート1. プレゼンス:2. 深きものども、ショゴスと古のもの  Part 1 Presence 2 Profonds, Shoggoths et autres grands anciens [3:20]
5. パート2. エンプリズ:3. ネクロノミコン  Part 2 Emprise 3 Necronomicon [3:10]
6. パート2. エンプリズ:4. 海からきた発狂  Part 2 Emprise 4 La demence qui vint de la mer [3:48]
7. パート3. レデンプション:5. ルルイエ  Part 3 Redemption 5 R’lyeh [2:29]
8. パート3. レデンプション:6. ヨグ=ソトース  Part 3 Redemption 6 Yog Sothotheries [3:35]

9. アクイラ・ノン・カピト・ムスカス (エポマンドゥオドゥルム):マキシム・オーリオ [12:41]
Aquila non capit muscas (Epomanduodurum) :Maxime Aulio

メモリアル:カロル・ベファ
Memorial:Karol Beffa
10. :パート1 マエストーソ  Part 1. Maestoso [8:38]
11. パート2 ヴィヴァーチェ  Part 2. Vivace [4:48]

12. 踊りに行きたかったカボチャ:ローラン・ボモン [4:10]
La Citrouille qui Voulait aller Danser:Laurent Bomont

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